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熊本地方裁判所 昭和38年(ヨ)111号 決定

決   定

熊本県水俣市大字浜小島六六七番地

申請人

合成化学産業労働組合連合

新日本窒素労働組合

右代表者執行委員長

村上実

右代理人弁護士

岸星一

萩沢清彦

加藤康夫

内藤義憲

杉本昌純

大阪市北区宗是町一番地

被申請人

新日本窒素肥料株式会社

右代表者代表取締役

吉岡喜一

右当事者間の昭和三八年(ヨ)第一一一号仮処分申請事件につき、申請人から別紙仮処分申請がなされたが当裁判所はその申請を理由ありと認め、次のとおり決定する。

主文

被申請人は申請人と被申請人間の別紙昭和三八一年月二一日付賃金協定書第二項並びに同日付覚書による協定に違反して基準を設けて行うと否とに拘わず申請人組合員を解雇してはならない。

申請費用は被申請人の負担とする。

昭和三八年八月一二日

熊本地方裁判所

裁判長裁判官 後 藤 寛 治

裁判官 志 水 義 文

裁判官 畑 地 昭 祖

(別紙)

賃金協定書

新日本窒素肥料株式会社(以下会社という)と日窒労働組合連合会(以下連合会という)及び合成化学産業労働組合連合新日本窒素労働組合(以下水俣組合という)は賃金引上げ等に関し、下記のとおり協定する。

一 賃金(省略)

二 過剰人員問題について

水俣工場の過剰人員問題については、会社は水俣工場の全従業員を対象として、希望退職者を募る等の方法により整理を行う。会社は下請業務の再検討により、整理人員の減少に努力し、退職条件については優遇措置を講ずる。

連合会及び水俣組合はこれを諒承する。

三 協定の有効期間について

この協定の有効期間は、協定締結の日より昭和四〇年九月二〇日までとする。

以上確認の証として、本書正本四通を作成し、会社・連合会・水俣組合及び熊本県地方労働委員会各一通を保有する。

昭和三八年一月二一日

新日本窒素肥料株式会社

取締役社長 吉岡喜一

日窒労働組合連合会

中央執行委員長 長野春利

合成化学産業労働組合連合新日本窒素労働組合

執行委員長 江口政春

立会人

熊本県地方労働委員会

新日窒水俣工場争議あつせん員

荒木精之

荒木誠之

(別紙)

覚   書

争議妥結協定書、賃金協定書及び争議行為に伴う個別的責任等の処理に関する協定書の解釈は、昭和三八年一月五日付及び同年一月一八日付あつせん案についての当事者の質問に対するあつせん員回答に従う。

以上の証として本書正本四通を作成し、会社・連合会・水俣組合及び熊本県地方労働委員会各一通を保有する。

昭和三八年一月二一日

新日本窒素肥料株式会社

取締役社長 吉岡喜一

日窒労働組合連合会

中央執行委員長 長野春利

合成化学産業労働組合連合新日本窒素労働組合

執行委員長 江口政春

立会人

熊本県地方労働委員会

新日窒水俣工場争議あつせん員

荒木精之

荒木誠之

(別紙)

仮処分命令申請

水俣市大字浜小島六六七番地

申請人

合成化学産業労働組合連合

新日本窒素労働組合

右代表者執行委員長 村上実

東京都中央区銀座東五ノ一 三原橋ビル三階

右代理人弁護士 岸星一ほか四名

大阪市北区宗是町一番地

被申請人 新日本窒素肥料株式会社

右代表者代表取締役 吉岡喜一

地位保全仮処分申請事件

申請の趣旨

被申請人は申請人と被申請人間の別紙昭和三八年一月二一日付賃金協定書第二項並びに同日付覚書による協定に違反して基準を設けて行なうと否とにかかわらず申請人組合員を解雇してはならない。

申請費用は被申請人の負担とする。

との仮処分命令を求める。

申請の理由

(当事者)

一 申請人合成化学産業労働組合連合新日本窒素労働組合(以下単に組合という)は、被申請人新日本窒素肥料株式会社水俣工場の従業員を主体として組織する労働組合であり、法人格を有し、その組合員数は約一八〇〇名である。

被申請人新日本窒素肥料株式会社(以下単に会社という)は表記のところに本店を、水俣市に水俣工場を、その他の地に営業所、研究所等を有し、化学肥料、可塑剤、塩ビ、酢酸エチル等の製造販売等を業とする株式会社である。

(妥結協定の経過)

二、組合は会社に対し、昭和三七年二月一日賃金増額等を求めて交渉を行つたが応じられず、反つて会社はいわゆる安定賃金の協定を組合に迫り、同年三月以降争議状態に入り、七月二三日より工場閉鎖が実施され、翌二四日には一部組合員が組合を離脱していわゆる新労なる集団を作り、長期の争議を経て熊本県地方労働委員会(以下単に地労委という)のあつせんにより本年一月二一日妥結した。

右あつせんは、荒木精之、荒木誠之両氏(以下単にあつせん員という)をあつせん員とし、昭和三七年一二月下旬より本年一月初頭に亘り進められ、一月五日付であつせん案(疎甲第一号)が労使双方に呈示され、組合は一月一四日、会社は一月二一日、夫々受諾し、一月二一日付であつせん案と同一内容の協定書(疎甲第五号乃至疎甲第八号)が成立した。

右協定中賃金協定書(疎甲第六号)第二項には、

水俣工場の過剰人員問題については、会社は水俣工場の全従業員を対象として、希望退職者を募る等の方法により整理を行う。会社は下請業務の再検討等により、整理人員の減少に努力し、退職条件については優遇措置を講ずる、連合会及び水俣組合はこれを諒承する。

とあるが、右条項は一月五日付あつせん案(疎甲第一号)第六項と同文である。

水俣工場における人員整理の要否については、前述年末年頭に亘るあつせん過程のなかで、会社が組合員を解雇することはしないという前提で組合は希望退職募集を諒承することとなつていたので、組合は一月五日右あつせん案呈示とともに直ちにあつせん員に対しこの点の疑義を残さないように質問を行つたところ、同日付「あつせん案についての組合側質問に対するあつせん員の回答」(疎甲第二号第九項)において、

(あつせん案)第六項の「希望退職者を募る等の方法」とは、配置転換その他当事者の協議により定められた手段方法をさし、会社が特定の者を直接指名して解雇することを含まない。

との回答があつせん員からなされた。

ところが、その後一月一八日会社の質問に対し同日付「あつせん案についての会社側質問に対するあつせん員回答」(疎甲第三号)第四項第二号において、

(あつせん案第六項の)「希望退職者を募る等」の意味は、組合の質問に対する回答のとおりであり、一定の基準を設けて該当者を整理することは、会社が特定の者を直接指名して解雇することには含まれない。

との回答があつたので、組合はその意味を明らかにするため再度あつせん員に対し質問したところ、あつせん員は一月一八日付「組合側質問に対するあつせん員回答」(疎甲第四号)第二項において、

(あつせん案)第六項に対する回答(註、疎甲第三号をさす)中「一定の基準を設けて」とは、当事者の協議により定められる手段方法の一ツを挙げたものである。

と回答した。右の経緯で明確になつた骨子は、水俣工場の人員整理のみについていえば、「希望退職者を募る等の方法によること」「会社が特定の者を直接指名して解雇することは」しないこと――指名解雇ができないこと――ということである。(これに附加して「一定の基準を設けて該当者を整理すること」はどうかとの会社側の質問に対し、あつせん員は、それは組合との間で協定が成立しなければできないと答えているわけである)

前掲疎甲第六号賃金協定書第二項は右の経緯をもととして締結されたものであり、右協定書の解釈については前出各あつせん員回答(疎甲第二号乃至第四号)に従うことを労使双方が受諾した旨を明らかにするため、次の如き覚書(疎甲第八号)を併せて締結したものである。

覚 書

争議妥結協定書、賃金協定書及び争議行為に伴う個別的責任等の処理に関する協定書の解釈は、昭和三八年一月五日付及び同年一月一八日あつせん案についての当事者の質問に対するあつせん員回答に従う。

なお、一の協定(覚書も含めて)の有効期限は昭和四〇年九月二〇日までとされている。

(協定の解釈)

三、前述の経過で明らかな通り、水俣工場の人員整理については、

(1) 水俣工場の全従業員を対象として行うこと、従つて組合員、新労所属員、非組合員の総てを対象とすること。

(2) その方法は先ず

(イ) 会社は下請業務の再検討その他人員整理以外の社内措置により整理人員の減少に努力すること(疎甲第六号第二項)

(ロ) 配置転換、社外勤務により処理すること(疎甲第二号第九項参照)

やむを得ず人員整理を行う場合には

(ハ) 希望退職者を募集すること。その場合退職条件については優遇措置を講ずること(疎甲第六号第二項)

(ニ) 特定の者を直接指名して解雇しないこと(疎甲第二項第九項)

(ホ) 一定の基準をもうけて、該当者を整理することは組合との協定が成立したときにおいてのみなしうること(疎甲第四号第二項なお疎甲第二号第九項参照)

(ヘ) その他の方法は何れも組合の同意がない限り行えないこと(疎甲第二号第九項)

と協定されたものである。

叙上の如く、長期争議の妥結に当り、組合は長期安定賃金協定について譲歩し、争議指導者二名の退職を忍受し会社は解雇を行わず希望退職募集により人員問題を処理することに互譲の上昭和四〇年九月二〇日まで有効とする右協定を締結したものである。

(第一次希望退職募集の経緯)

四、会社は本年五月六日付「希望退職者の募集に関する申入れの件」(疎甲第一〇号)と題する文書をもつて組合に対し全従業員中七五〇名の退職希望者を五月一三日より同月二七日までの間左の募集基準により募集したい旨を申入れた。

(1) 退職を希望し、会社がこれを承認した者

(2) 高令者

(3) 本人が退職しても、他に収入源があり、生活に支障を来さない者

(4) 出勤状況が不良の者

(5) 病弱者(業務上の傷病者を除く)

(6) 精神、身体に障害がある者(業務上の理由による者を除く)

(7) 素行不良の者若しくは会社業務に非協力な者

(8) 勤労意欲に欠け、職務怠慢な者若しくは作業能率が悪い者

但し(2)乃至(6)に該当する者については会社が業務上必要とする者は除外する。

これについて、組合は会社と交渉を行つたがまとまらないため、五月一二日地労委に対しあつせんを申請し、同日以降連日あつせんが続けられた結果、五月一六日あつせん員より労使双方に対し、希望退職募集並びに配置転換、転勤等に関し、あつせん案(疎甲第一一号)が呈示され、なお同上「あつせん案についての当事者質問に対するあつせん員回答」(疎甲第一二号)がなされ、労使双方はこれを受諾して五月二一日争議妥結協定書(疎甲第一三号)に調印し、更にその後右協定書の内容を見易すくするため別にあつせん案と同一内容を盛つた協定書(疎甲第一四号)並びに覚書(疎甲第一五号)を締結した。右あつせん案並びに協定書の大要は次の通りである。

(1) 会社は水俣工場全従業員を対象とし、七五〇名を目標として希望退職者を募集する。組合は組合員の自由意思を尊重する。

(2) 退職募集基準は次の通りとする。但し会社が業務上必要とする者を除外する。

イ 退職を希望する者

ロ 高令者

ハ 本人が退職しても、他に収入源があり、生活に支障を来さない者。

ニ 出勤状況が不良の者

ホ 病弱者(業務上の傷病者を除く)

ヘ 精神、身体に障害がある者(業務上の理由による者を除く)

(3) 会社は希望退職者の募集にあたり、従業員の自由意志を尊重し、強制にわたる行為を行なわず、また従業員の所属組合の如何により差別的取扱をしない。募集は課次長以上の非組合員により行なう。

募集にあたつての面接は、会社の業務命令として実施するものではなく、また従業員は、面接において自由意志を強制されることはない。また募集方法、応募者の取扱いにつき、全従業員を平等にすべきことは勿論である。(前出あつせん員回答第四項)

(4) 従業員の配置転換にあたつては、本人の意思を無視した発令を行なわず、労働条件を低下させない。転勤を命ぜられた者に異議あるときは、会社は組合と協議する。

その結果、五月二二日より六月五日に至る間希望退職者の募集が行なわれ、その募集は事実上六月一一日まで延伸された。右勧誘に際しては会社側非組合員による強制の事実を訴える組合員が多かつたが、組合側は協定の趣旨に則り組合員の退職希望の意思決定については静観をつづけ、総計一〇八名の退職者を見るに至つた。その内訳は、組合員八八名、新労所属員一八名、非組合員二名である。(今次希望退職者募集並びに解雇申入の経緯)

五、ところが、会社は七月四日付カロ第三七号「過剰人員の整理に関する再申入の件」(疎甲第一六号)と題する文書をもつて、同日組合に対し、七月一一日より同月三〇日までを募集期間として再度希望退職者の募集を行うこと、若し希望退職者の人員が六四二名にみたないときは希望退職基準をそのまま解雇基準としてその該当者を解雇する旨を次のように申入れた。

1 次の各号の一に該当する者(昭和三八年一二月末日までに停年退職となる者を除く)から希望退職を募る。(但し(1)乃至(5)の該当者については会社が業務上必要とする者を除く。

(1) 退職を希望する者

(2) 昭和三八年四月一日現在で満五二才以上の男子及び五〇才以上の女子

(3) 本人が退職しても他に収入源があり、生活に支障を来さないと認められる者

(4) 昭和三五年四月一日から昭和三八年三月三一日までの間(争議期間を除く)において傷病以外の理由により出勤状況が不良な者

(5) 病弱者(業務上の傷病者を除く)

イ 昭和三五年四月一日から昭和三八年三月三一日までの間において

(イ) 休職を発令されたことがある者

(ロ) 傷病による欠勤が通じて八〇日以上に及び又はその回数が通じて一〇回以上に及んだ者

但し前記(イ)又は(ロ)に該当する者の中、昭和三八年四月一日現在で健康体となつた者は除く

ロ 昭和三八年四月一日現在で

(イ) 休職中の者

(ロ) 引続き四〇日以上の長期欠勤者

ハ 現在病弱を理由として遂行すべき業務が限定されている者

(6) 精神、身体に障害があり、業務に支障があると認められる者(業務上の理由による者を除く)

(7) 昭和三五年四月一日から昭和三八年三月三一日までの間において、就業規則の懲戒基準に該当する行為のあつた者、但し改俊の情顕著な者を除く

(8) 昭和三五年四月一日から昭和三八年三月三一日までの間において工場の内外を問わず、他人の私生活を脅かし、若しくはその平穏を乱し、その他粗暴な行動のあつた者、但し改俊の情顕著な者を除く

(9) 昭和三五年四月一日から昭和三八年三月二一日までの間における考課に従い低位の者

2 上記希望退職を募つても、なお前記の人員に充たない場合は、上記1の(2)での基準により整理する。

但し(2)乃至(5)の該当者については、会社は業務上必要とする者を除く。

この場合の基準の適用については、同基準の(2)乃至(8)により行い、なお予定人員に充たないときは(9)を適用する。

而して右申入によれば退職に際しての優遇措置は第一次募集のそれより低下されている。

右会社の申入につき、七月五日、六日の両日に前後三回の団体交渉が開かれ、組合は人員整理については希望退職募集の方法によつて行われたい、解雇はしないようにと述べたが、会社は基準該当者を解雇することは撤回できない。組合がその点につき同意しなくても七月一一日より右申入書に基き希望退職募集を行い、整理予定数に充たない人員については基準に照らして解雇を強行すると宣言して一歩も譲らないため、交渉が進捗しないで、組合はやむなく七月八日地労委に対し、事態の平和解決を図るためあつせん申請を行つた。

爾来、あつせん員による接衝、あつせん員を交えた労使の交渉等が行われ、七月十七日あつせん員より次のようなあつせん案(疎甲第一七号)が呈示された。

一、会社は水俣工場全従業員を対象とし、六四二名を目標として、希望退職者を募集し、組合はこれを了承する。

募集期間は、このあつせん案を双方が受諾した日の翌日より二〇日間とする。

二、退職条件は、昭和三八年五月六日付カロ第十九号による会社提案と同様とする。

三、希望退職募集の実施については、当事者双方協議し、その円満な遂行に協力する。

四、希望退職者の数が、前記目標と著しく異なる結果となつたときは、その後の措置については、あつせん員の見解に従う。

右あつせん案の趣旨は、希望退職募集を基準を設けず全従業員(組合員、新労所属員、非組合員の総て)を対象として行うこと、もし希望退職者数が著しく少ないときはその後の措置をあつせん員に白紙一任すること、

というのであり、組合は七月二〇日、地労委に対し、希望退職募集については協力すること、右あつせん案第四項の「あつせん員の見解」が前出疎甲第六号賃金協定書第二項、疎甲第八号覚書(疎甲第二号、あつせん員回答第九項、疎甲第四号あつせん員回答第二項)の各協定の趣旨に反しない範囲のものであれば従うことはもとよりであることを回答した。(疎甲第十八号)(なお会社は受諾を回答した)

ところが、地労委は右組合の回答を受諾とはうけとりがたいとして、右あつせんは結局不調となつた。

組合はあつせん不調後も、希望退職募集により本問題の解決を図るためこれに協力する方針をとり、七月二四日より行われた会社の希望退職者募集についても組合員中から応募者が出易いよう協力して来たが、会社は全従業員に対する観誘は行わず予め会社が退職せしめたいと考えている者のみにつき面接観誘を行つている(疎甲第二六号)ので、如何に組合が協力(疎甲第十九号、同第二二号乃至同二五号)しても、退職希望者数は到底会社の予定する目標に達することはできないと考えられる実情にある。しかも会社は依然として退職希望者が予定人員に達しない場合は「基準解雇」を実施するとの決定(疎甲第二〇号)をかえず、組合に対してもその旨を申入れ(疎甲第二一号)爾後その態度を堅持している(疎甲第二二号、なお同第二六号参照)のであるから、組合の反対に拘らず右募集期間の終了する八月一二日の経過と共に組合員中の相当数を指名して解雇を強行することはあきらかである。

(被保全権利と仮処分の必要)

六、水俣工場の人員整理については、既に第二項及び第三項記述の協定が当事者間に締結されており、しかも未だ且て右基準により解雇することは組合の承諾しないところであるから、会社が前述募集期間終了後直ちに行う解雇は特定の組合員を指名して行う解雇と実質が異ならず前示当事者間の協定(賃金協定書第二項並びに覚書)に違反するものである。而して一度び解雇が発令されれば、右解雇という既成事実の発生により組合員は極度の不安に陥り、被解雇者並びにその家族は直ちに生活の脅威にさらされ、組合またその団結権を不法に侵害され、団体行動力を著しく減殺されることは多言を要さずして明らかである。(しかも会社の意図が組合員の争議責任追及等申請人組合員の整理に主眼をおいていることは疎甲第十六号証中整理基準(8)号並びに疎甲第二六号の記載に徴しても窺いうるところである)かくては、長期の争議の終結を図るために互譲により締結された前示協定が僅々半歳にして、しかも再度に亘る希望退職募集を行つたにも拘らずその有効期間中に会社の違背によつて踏みにじられ協定の一方当事者である組合の地位と権利は会社の違約行為の前に画餠に帰し回復すべからざる甚大な損害を蒙るので、組合は会社に対し右協定に違反して組合員を解雇しないよう不作為を求める本訴を準備中であるが、前述の如く会社が解雇を強行することが極めて明らかである実情からすれば、本案判決の確定をまつまでに、組合員に対する解雇が行われ、組合の蒙る損害は避けられないから、請求の趣旨記載の通りの仮の地位を定める仮処分命令を求めるため本申請に及んだものである。

疎明方法≪以下省略≫

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